2021.06.02
着色料の基礎講座⑤~着色料の退色について~
お客様からいただく着色料についてのご相談で、最も多いのが退色のお悩みです。着色料にとって退色は最大の課題と言えます。今回は着色料の退色について、実際の着色品写真と共にその要因をまとめました。
光による退色
蛍光灯や太陽光の持つエネルギーによって色素成分が分解されることで退色が生じます。商品が透明包装で陳列される際などには退色に留意する必要があります。
特に影響が大きい色素:ベニコウジ色素、ベニコウジ黄色素、リボフラビン |
●ベニコウジ色素の光退色
着色したスポンジ生地に対し蛍光灯下で1000ルクス 5日間の光照射を行いました。【左:ベニコウジ色素 右:クチナシ赤色素】
・光照射前 | ・光照射後 |
●リボフラビンの光退色
着色したスポンジ生地に対し蛍光灯下で1000ルクス 5日間の光照射を行いました。【左:リボフラビン 右:クチナシ黄色素】
・光照射前 | ・光照射後 |
熱による退色
製造ラインでの加熱や保管時に受ける温度によって色素成分が分解されることで退色が生じます。製造直後は問題が無くても、保管温度が高い場合は保管中に退色が生じることがあります。
特に影響が大きい色素:アカビート色素、スピルリナ色素 |
●アカビート色素の熱退色
着色した蒸しパン生地に対し90℃ 20分の蒸し加熱を行いました。【左:アカビート色素 右:コチニール色素】
・加熱前 | ・加熱後 |
●スピルリナ色素の熱退色
着色した蒸しパン生地に対し90℃ 20分の蒸し加熱を行いました。【左:スピルリナ色素 右:クチナシ青色素】
・加熱前 | ・加熱後 |
アスコルビン酸(ビタミンC)による退色
アカキャベツ色素やムラサキイモ色素などのアントシアニン系色素は酸化防止剤として使用されるアスコルビン酸(ビタミンC)と共存することで、かえって酸化が促進され、退色が生じます。
特に影響が大きい色素:アントシアニン系色素(アカキャベツ色素、ムラサキイモ色素、エルダーベリー色素など) |
●アスコルビン酸によるアカキャベツ色素の退色
pH3緩衝液に着色後に2000ルクス 10日間の光照射を行いました。【左:アスコルビン酸0.1%添加品 右:アスコルビン酸添加無し】
・照射前 | ・照射後 |
アスコルビン酸による退色抑制
上記とは逆にβ-カロテン、トウガラシ色素などのカロテノイド系色素は酸化防止剤との併用によって、退色が抑制されます。
特に影響が大きい色素:カロテノイド系色素(β-カロテン、トウガラシ色素、クチナシ黄色素など) |
●アスコルビン酸によるβ-カロテンの退色抑制
精製水に着色後に2000ルクス 10日間の光照射を行いました。【左:アスコルビン酸0.1%添加品 右:アスコルビン酸添加無し】
・照射前 | ・照射後 |
酸化剤による退色
水道水に含まれる次亜塩素酸や、殺菌・漂白の目的で使用される亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤により色素成分が酸化されることで退色が生じます。
●水道水溶解時におけるマリーゴールド色素の退色
水道水に着色後に40℃で3日間保管しました。【左:水道水に溶解 右:精製水に溶解】
・保管前 | ・保管後 |
※本結果はあくまで試験条件であり使用される食品によっては異なる結果となる可能性がございます。
上記要因以外にもpHや食塩などを要因とする色素成分の不溶化や、乳化製剤の乳化不良も色が抜ける原因となります。
退色が生じた際にはご使用条件からその要因を探ることで、対策や、代替え品のご提案が可能です。着色料の退色についてご相談やご質問がございましたらこちらからお気軽にお問い合わせください。
着色料の基礎講座①~なぜ着色料は使われるのか?~
着色料の基礎講座②~天然着色料とは~
着色料の基礎講座③~色価・色調~
着色料の基礎講座④~添加物製剤とは~
着色料の基礎講座⑥~pHによる色の変化について~
着色料の基礎講座⑦~着色料の乳化について~
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この記事に関する品目
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アカビート色素
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植物炭末色素
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コチニール色素
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クチナシ青色素,ラック色素
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